12月3日フィールドワーク報告会、あるいは「POWER OF MUM」への注釈

12月3日フィールドワーク報告会、あるいは「POWER OF MUM」への注釈

水野研、学部三年の太田です。
今日はキャラ弁プロジェクトの海外展開を見据えた成果発表の冊子まとめについての話が主でした。というのも、1月にオランダから『This is service design thinking』の著者をSFCにお招きし、キャラ弁プロジェクトの紹介やワークショップを企画しています。その際の情報共有を円滑に進めるべく、A4判型で50ページ超の冊子を作ろうというのがこの企画です。また、これは先学期から続いている本sfc*sfcでの研究活動をまとめた成果としても、対外的に発表できるような媒体を目指しています。

今日はまず初めに、田中先生よりご自身が担当されている授業である『デザイン言語実践』の紹介がありました。同授業の一環として、「フォークをフォークするフォークソノミー」と題してグループワークでカトラリー(食器)をリデザインするという課題があり、そのプレゼン発表会が先日行われました。例えば「うさぎみみフォーク」という作品は、木材を加工してうさぎの耳を模し、それをリンゴに刺すことで――食材の加工ではない形で――「うさぎみみリンゴ」を表現するというプレゼンがありました。

このような食器のデザインから、食事という社会関係や食卓空間そのものを「デザイン」するような実践は、本キャラ弁プロジェクトが掲げるところの「おいしく、たのしく、美しく」というテーマに直結してくるところがあります。同発表会の講評にはキャラ弁PJのマネージャーでもある田島さん(NTTデータ)や加藤文俊先生も参加され、盛り上がっていました。

次に本題である冊子の編集について、田島さんより説明がありました。これまで本プロジェクトは多様な文脈を含む「キャラ弁」について、6*6のマトリクスを切って分析枠組みとしてきました。縦軸として「食材・調理法・道具・題材・賞味法・表象」があり、横軸として「個人・コミュニティ・費用・歴史・技術・社会」があります。

各担当者は縦と横のラインが重なるセルを意識して、それぞれのリサーチを分析してきました。これに則り、冊子全体の章立てがこのマトリクスを意識したものになるという編集方針が田島さんより共有されました。

最後にフィールドワークの成果報告がありました。加藤研の深澤くんと田中さんより発表がありましたが、ここでは深澤くんのリサーチに触れます。

深澤くんは「主婦と生活社」にインタビューへ行き、キャラ弁のレシピ本(『akinoichigoのキャラ別お弁当おかず236』)や『パンケーキcafe』などを担当する料理編集部の方に話を伺いました。これは先のマトリクスで言うところの「表象」に当たるリサーチとして実施されたものであったため、「人々にとってのキャラ弁像」を形成するメディア環境を中心に見ていくものでした。今回はそのひとつとして、小学2, 3年生の子供を持つ主婦層を購買ターゲットとした同社へとリサーチの目が向いたというのが、フィールドワークの大まかな前提です。

インタビューのすべてを紹介することはしませんが、一部筆者の関心に触れたものを抜粋すれば、それは「費用*表象」のセルに位置づけられるようなインタビュー内容でした。曰く、キャラ弁のレシピ本を作るにあたり、キャラ弁の参照先であるキャラクターの著作権者に対して多大なライセンス料を払っているために、あまりたくさんのキャラクターを誌面に載せられないのだそうです。例えば、スヌーピーなどをかたどったキャラ弁を載せる際には、ライセンス料を払う必要がある。そこから、akinoichigoさんのような――参照先を持たない――オリジナルのキャラクターを用いたキャラ弁とその作者が重宝されるという話がありました。

このことを踏まえてキャラ弁におけるキャラクターの二次創作性を考えてみるなら、ゼロ年代のキャラクターにまつわる環境論・作品論からキャラクターを分析した『ゴーストの条件』という著作への関わりが見いだせます。そこでは、2ちゃんねるにおける無限のコミュニケーションの中でいつの間にか誕生していた「起源を持たない」――オリジナルの登場作品が存在しない――キャラクター=ゴーストとして「やる夫」という、AA(アスキーアート)による抽象化された図像しか持たないキャラクターがその成立環境も含めて分析されます。やる夫のようなキャラクターには言うまでもなく著作権料が発生しないため、例えば2ちゃんねるのキャラクターだけを用いたキャラ弁本が作られ得るだろうか、ということを考えました。

(しかしながら2ちゃんねるのキャラクターを用いて商品化を行ってバッシングを受けた「のまネコ問題」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%83%8D%E3%82%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C)のような例や似たような事例として「カオスラウンジ問題」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%82%B9*%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%B8)などがあるため、込み入った議論が必要となるでしょう)

以上はリサーチの報告を受けた筆者の個人的な連想でした。このような多様な文脈からキャラ弁という事象を見ていくことで、それを生じさせている日本社会全体を照らし出すような研究として、本キャラ弁プロジェクトはあります。

それに関連して、「THE POWER OF MUM」という主題を解題することを以て、本稿の終わりとしたいと思います。これはチャールズ&レイ・イームズによる「Powers of Ten」をいわば「元ネタ」としており、10のべき乗で以て私たちの生きる宇宙を極小から極大のスケールまで一望してみせたその手法を借りて、キャラ弁という中心を据えることでミクロな(例えば)主婦個人の制作上の技術からマクロな文化社会学的な観点までをスケーラブルに捉えるという本プロジェクトの「意気込み」が、このタイトルには込められていると言えます――しかし水野先生言うところの「ギャグ」を注釈するのは、いささか野暮な試みだったかもしれません。

太田